積読と『そして誰もいなくなった』の感想
まず、私はかなりの量の本を積んでいるんですよ。今回感想を書く『そして誰もいなくなった』もそのうちの1冊で、しかもかなりの期間積んでいました。
いくつか理由があるけど、
- 読書する気分になったときに選択肢がたくさんあると幸せな気持ちになる
- 読むのがもったいない気がして寝かせている
この2つが本を積んでいる理由の大部分を占めている。
小説、ドラマ、アニメ、いろいろなものに当てはまると思うんですけど、素晴らしい作品を知った後、記憶を消してもう一度最初から見たいな……って気持ちになることって多々ありません?でもそんなことは不可能で。1回読んでしまったら読む前に戻れないし……っていう。
推理小説が好きで、ずっとアガサクリスティを読みたくて、だからこそ余裕のあるときに丁寧に大事に読まなきゃ!の気持ちと、読んだら読む前に戻れないの寂しいな……の気持ちで数年寝かせていました。
今まで読んできた本を丁寧に読まなくてもいいと思っていたわけでは決してないんですよ、そこの違いはなんだろう……不朽の名作!ミステリの金字塔!っていう評判からなのかな、たぶん。
そんな感じで大事に積んでいたんだけど、ついに読んだ。
『スタイルズ荘の怪事件』→『そして誰もいなくなった』の順番でアガサクリスティデビューしました。スタイルズ荘の感想もまとめておきたい、いつかきっと未来の私がやってくれるはず。
横文字の名前って慣れなくて大変だなあと最初は苦戦していた。これも積んでいた理由のひとつなのかもしれない。
『そして誰もいなくなった』感想。以下ネタバレあります。
孤島が舞台のクローズドサークルであることと、童謡に見立てた殺人がおこることは知ってる状態で読みました。
クローズドサークル、見立て殺人、わくわくしますよね。もちろんフィクション作品に限った話です。ここらへんについて最近考えていることもいつか文章にしたい。
主人公がひとり決まっているわけではないのも、読者目線での確定白が無いのが楽しいな~と思いながら読み進めていました。
登場人物の心理描写が見事で、サスペンスとしても楽しめました。こんなことになったらそりゃ気が狂うよ……。
この島に集められる理由になったそれぞれの罪について、葛藤していたりしていなかったり……その部分には共感はしなかったものの、描写が繊細で面白かったです。いや、面白かったで合ってるのか分からない……適切な言葉選びじゃない気がする。
葛藤していたりって書いたけど、殺人に対してはそんなに葛藤していなかったかもしれない。ヴェラも教え子を殺したことというよりはヒューゴーにバレたこと、喜んでもらえなかった、連絡がとれないことのほうに比重が置かれていたかも。
エピローグにて椅子がきれいに並べられていたと書いてあったときの、えっ???って感覚が本当に最高。記憶消してもう1回最初から読みたい。
種明かしがボトルメールで、というのもいいなあ。未解決感というか消化不良感というか。
犯人の予想とか何もせず、???の状態で最終章を読んだ。犯人その人かー!となりつつ、トリックについては少し引っかかってもいる。誰か生きていて裏で……とは睨んでいたけど、判事はそんなに医者の信頼を勝ち取っていた?とか、死んだふりバレないことある?とかはちょっと思ってしまう。顔がつぶれた遺体のほうでなにかあるのかなと思っていた。
それと、<くん製のニシン>については知識不足で悔しいです。ほんとに。
ウォーグレイヴはよくもまあ律儀に童謡のその部分でペテンを仕組んだなあと思いつつ、でもそれが彼の矜持でありルールとして課していたものでもあって、蜂然りニシン然り、さぞかし楽しかったんだろうなあ。
この手紙を書いているときのウォーグレイヴは自分に酔ってうきうきしてるんだろうなと私は思う。手のひらのうえで人を転がし操ってやったという万能感、法で裁けない罪人を裁いてやるという大義をかかげて嗜虐欲求も満たしながら正反対の正義感にも言い訳が効くようにして、何人にも解けない殺人ミステリを作り上げ、あえて人殺しカインの刻印を残す。
上にも書いたけど、消化不良な感じというか、トゥルーエンドではない感じがとても好みだけど、その一方でウォーグレイヴの思い通りなの気に入らないなあ!法のもとで裁かれてくれ!!!とも強く思う。
私も相反する矛盾した性格が同居してるみたいです!ねえ、ウォーグレイヴ判事!!!
深夜のテンションでキレてしまった。ウォーグレイヴへの複雑な感情を忘れないうちにもう1度読みたい……誤読しているかもしれないし。
2回目読んで理解を深めたいと思う本が多すぎて処理できずにいる。けど、近いうちに読みます、きっと。